私のようなおっさん世代はどハマりしたことだろうミニ四駆。私はセイバーの時代ではなく、後半のWGP編からがとても好きだった。WGPは要はミニ四駆のワールドカップ。GPチップというテクノロジーを用いてマシンを走らせる。チーム走行をしたり、レーサーの想いがマシンへ伝わったり、走りをマシンが学習していってポテンシャルが上がったりとテクノロジー要素が高まり、戦術的な走りをする必要が出てくるのが特徴的だ。平たく言うとこれまでのわちゃわちゃ個人戦のカットベマグナム!の一筋縄ではいかなくなるってお話だ。世界グランプリなので当然各国のレーサーと対決していくが、これまたキャラが立っていて本当に良い仕上がり。
正月にYoutubeで公式からWGP編が期間限定公開。有休消化期間にガッツリ保存して見直してみた。40手前となって社会にもまれた今でこそ、当時とは異なる感情、解釈となり、とても沁みた。これは大人向けだ。間違いない。1話30分、×51話の1,530分=25時間。仕事と子育ての隙間時間を全て捧げ、余暇の時間を見終わるまでこいつに捧げた。それ以上の価値がある。書かずにはいられなくなり、何百日振りかにブログを更新している。
もうね、後半の5話でいい。そこに全てが詰まっている。中でも神作として名高い「勝者の条件」から。最終レースはドイツ、アメリカ、日本、イタリアの4カ国対抗。3日間かけて行われる。このタイトルは2日目のテクニカルコースのレースとなる。
キャラもチームもマシンも多くて説明すると大変なので気になった人はぜひチェックしてみてほしい。最終戦の超ざっくり説明は以下の通り。
国:チーム名/マシン名/主要キャラ/方針
ドイツ:アイゼンウォルフ/ベルクカイザー/ミハエル/正々堂々
アメリカ:NAアストロレンジャーズ/バックブレーダー/ブレット/データ
イタリア:ロッソストラーダ/ディオスパーダ/カルロ/バトル
日本:TRFビクトリーズ/色々/烈と豪/頼んだマグナム
・豪:ビートマグナム
・烈:バスターソニック
・とーきち:スピンバイパー
・りょう:ネオトライダガーZMC
・J:プロトセイバーエヴォリューション
この話はミハエルと烈とカルロの3人のチームリーダーの戦い。(アメリカのハマーDさんもいたけど、もはやネタ枠)人間の心情の移り変わり、自己矛盾と葛藤、ミニ四駆における信念とその結果。正義と悪という尺度ではない。それぞれ自分の信じる信念が異なり、そのぶつかり合いだ。何やらやたら壮大なテーマに感じるかもしれないが、40手前のおっさんが見るとこういった解釈になる。
本題に入る前にこの3人についてちょっと補足説明。
ミハエル:天才レーサー、これまで無敗。アイゼンウォルフのリーダー
烈:一般家庭代表。ビクトリーズのリーダー。
カルロ:スラム出身。ロッソストラーダのリーダー。
カルロとロッソストラーダについて
この物語の解説する上で触れる必要がある。軽くスラム出身と書いたが、カルロの率いるロッソストラーダメンバーは元々ミラノのスラム街出身という設定らしい。「またゴミの生活に戻れってのか。。」と言うくらいなので過酷な生活を送っていたと推測できる。アニメでは細かい描写はなかった気がするが、物を盗んだり、ゴミを漁って生活していたような一幕があった。
そんな彼らがミニ四駆のおかげで現在のイタリア代表という地位を手に入れていることから、カルロがチームメンバーのグリスか何かが固まっていた時に「マシンは常に最高の状態にしておけ!!!」とキレるシーンもあったり、「マシンに詫びろ!」というシーンもあったり、少しこの発見には驚いた。
と、いうのもこのロッソストラーダはバトルレースで有名な人たちなのだ。要は審判(ファイター)の目を盗んで対戦相手全員クラッシュして勝つということをしてきた。初期はマシンにナイフつけて串刺し、後半はバレてしょっ引かれたので衝撃波を使って巧みに相手マシンを攻撃してきた。「アディオダンツァ」と呼ばれる彼らの必殺技だ。
子供の頃見たら完全なる「悪」なのだ。純粋だった子供の頃の私も、「あ、かるろはわるい人なんだ」というふうに思う。大半の子供は子供時代はカルロは嫌いなはず。
しかし、物語をよくよくみてみると、チームメンバーとカルロはこのバトルレースを仕掛ける動機が少し違うようなのだ。マシンを壊すことを楽しんでバトルを仕掛けるメンバーとは違い、カルロは勝つためにバトルを仕掛けている。彼は勝敗に関係ない破壊行為はしないというスタンスであるということがはっきりとわかった。そして感情的にならず、あくまで冷静で勝ちにいく。バトルはその為の手段。
名誉と賞金。これがカルロの戦う理由だった。このチャンスをくれたミニ四駆に対しては真摯で誠実であることがわかったのだ。(約30年越し)
レース
テクニカルコースの第二セクションはアイゼンウォルフ3人、アストロレンジャーズ2人、ビクトリーズ3人、ロッソストラーダはなんとカルロ1人。前半はアストロのネタ枠がわちゃわちゃするが、すぐに抜かれて首位争いから離脱。空気なのでここからスルーします。
ミハエルと烈の首位争い
天才レーサーと言われたミハエルとついにマッチアップする烈とバスターソニック。
ミハエル「マシンなんか信じてない。敵だ。支配することで勝てる。無敗なのは支配し続けてマシンに勝ち続けているからだ」
烈「マシンは仲間だ、敵なんかじゃない!そんなことを言う君に負けるわけには行かない!ソニックを信じている、ソニックならきっと勝てる!」
烈のこの叫びにソニックのGPチップが呼応、ベルクカイザーを抜き首位に躍り出る。そしてミハエルに「さあこい!勝負だ!」と捲し立てる。なかなかこういう攻撃的な言葉使わない彼ですがこの烈もカッコイイですね。そんなこんなで首位争いは続いていきます。
一方その頃・・・
カルロは最後尾を走る。「身体が重い、、こんな時に雨なんか降りやがって。。」とここで過去の自分がフラッシュバック(スラム時代の幼少期の自分の姿を思い出す)
ふとマシンを見つめ「ディオスパーダ・・・」と呟く。
そしてトップ争いをしているミハエルと烈の攻防戦の実況にカルロが吠える。
「ゴミの生活に戻れってのか・・・ごめんだぜ、このレースに勝って優勝賞金と最高の名誉を手に入れてみせる!行くぞ!ディオスパーダァァァァァァ!!!!」ここから猛烈な追い上げが始まる。
「あいつらには負けられねぇ、負けられねぇんだ!」
「先頭はまだか!先頭がまだ見えねぇ!」
と自分とマシンを鼓舞しながらアップヒルを駆け上がる。
さあそうこうしているうちにミハエルと烈がアップヒルを上りきり、最後のホームストレートへ。激しい攻防の末、マシンを信じた烈のバスターソニックがミハエルを突き放しゴールへ一直線。ベルクカイザーは完全に落ち、首位はバスターソニックになるかと思ったその時。。
「うおぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」
と激しい雄叫びと共にカルロとディオスパーダが現れる。
「キター!紅の閃光!ディオスパーダがここでキタァ!!」
※ファイターのここの実況もいいですよね。震えます。
そしてあっという間にベルクカイザーをかわしてバスターソニックに迫る。
チームメイトのジュリオから「アディオダンツァよ!今ならやれるわ!大丈夫雨でスリップしたってことで事故で済むわ!」と無線で囁かれる。要はスリップに見せかけてバトルでやっちまえと。
しかし、カルロ
「ウルセェぇぇぇぇぇぇ!!!!」
と一蹴。
だが、加速一歩及ばず。ゴール寸前の攻防はこのままバスターソニックが制するかと思いきや。。。。
「まだだぁ!抜けぇ!ディオスパーダァァァァァ!!!!!」
とディオスパーダがゴールテープ直前で再加速、バスターソニックを抜いて首位でFinish。
そして雄叫び。キャプチャしたけど、これ、声聞こえてきそうでしょう。どうです?
声もね、若干裏返ってかすれているんですよ。本当にね、震える。ゴール時にカルロが少し嬉しそうにほころんだ表情を見せるんですよ。おそらくディオスパーダに対しての信頼と感謝のものと解釈してます。今まで「やれ、とか、潰せ!とか言ってて、ここで「抜けぇ!」ですよ。
これでFinってでてもおかしくない名場面。
さて前置きが長くなり、本題忘れそうでした。
勝負を大きく左右したのは何だったのか?タイトルの「勝者の条件」の意味。
バトルを繰り広げた3名の信念。分析するとこんな感じですかね。
- ミハエル:支配して自分のマシンに勝つ
- 烈:仲間を信じて相手レーサーに勝つ
- カルロ:レースに勝つ
ミハエルは支配していたベルクカイザーに裏切られた。烈はミハエルに勝った時点で気が抜けた。完全に足元掬われた感がある。カルロは最後までただただ、ゴールを目指して最後まで走り続けた。ディオスパーダはカルロの気持ちに応えるようアディオダンツァを使うことなく真正面から1位をもぎ取った。
カルロの「あいつらには負けられねぇ。負けられねぇんだ。」というセリフ。生まれた時から何不自由なく育ち、ミニ四駆をやっているミハエルや烈とは違う。ここで勝たなきゃ意味がないんだというハングリー差も感じることができます。
支配では仲間はついてこず。仲間を信じても戦う相手に勝利しても目標を見誤ると勝利を逃す。最後に勝つのは、ただひたすらにゴールという目標を求めた者。
営業の世界でも往々にして起きることだし似たようなシチュエーションも経験した。何が正しいとは言えないが、カルロが勝った理由はこの歳になってやっとわかった。
神回で今尚語り継がれているんですね。この話。
本当に素晴らしかった。拍手。
しかし、このカルロの勝利は、後に自己矛盾を生み、彼を悩ませることとなるんですね。いやぁ深い話だ。時間が空いたらファイナルセクションについても熱く書いていこうかと思う。